蜃氣樓 I

-for Unaccompanied Flute-

(2006)

[ca 6 min.]



春日に霞む水平線

大蛤の微睡みの吐息

老いし方士の夢の放擲

虚空に浮かぶ蜃氣樓の故郷


＊　＊　＊


この作品は、津上信子氏の委嘱により作曲したものである。
蜃氣樓を巡る古い由来譚や徐福伝説に導かれ、

故郷と異郷が交錯するパロディックな物語を、

まずはフルート一管に嘯かせようと企てた。


蜃氣樓とは一名“海市（かいし）”とも謂い、

海底に棲む大蛤（蜃）の呼気から立ち顕われる幻の楼閣都市のこと。
秦の始皇帝の命を受け、故郷を離れ蓬莱を目指した方士・徐福の眼前に、

吾が列島は蜃氣樓の如く出現したのかも知れない。
 

 

 

 [委嘱]

 

 

[演奏記録]

2007年12月1日　兵庫県　西宮市甲東ホール　（Fl:津上 信子）　
2008年6月29日　大阪市　ムラマツリサイタルホール　（Fl:津上 信子）　

2018年12月19日　東京都新宿区　東京オペラシティ近江楽堂　（Fl:森本 英希）

2023年3月3日　京都市　京都コンサートホール小ホール　（Fl:森本 英希）

 

 

 

 

(C)HIRANO Ichiro 2007.