蜃氣樓●協奏曲

SHINKIRÔ ● CONCERTO

 

〜三種のフルートと三群の弦楽器、打楽器の為の三連画〜

~Triptych for 3 types of Flute, 3 String-Ensemble & Percussion~


(2014)




I: 蓬莱 Hôrai


遷宝乃儀•阿 Sempô-no-Ghi • A

 

II: 方壷 Hôko

 

遷宝乃儀•吽 Sempô-no-Ghi • Ω

 

III: 瀛州 Eishû


 

* * *

 

 

春日に霞む水平線


大蛤の微睡みの吐息

 

老いし方士の夢の放擲


虚空に泛かぶ蜃氣樓の故郷



この作品は、フルート奏者・森本英希氏の委嘱に応え、2014年の春から夏にかけて作曲した。2006年の無伴奏フルート曲〈蜃氣樓〉と通底する着想に拠りながら、一切の素材を改め取り組んだ新作。古今東西の笛を縦横に操りつつも、その奥底に一つの道を求める、森本氏の音と志に触発されたものである。


蜃氣樓とは一名“海市”とも謂い、海底に棲む大蛤(蜃)の呼気から立ち昇る、幻の楼閣都市のこと。故國を滅ぼして世に君臨する秦始皇帝から、不老不死の霊薬探索の命を取り付け、民を率いて海中の三神山へと旅立ち、竟に戻らなかった方士・徐福。そんな徐福一行の眼前に、吾が列島は蜃氣樓の如く出現したのかも知れない。

 

〈蜃氣樓●協奏曲〉は、東アジアの古代に霞む徐福渡海伝説と、丹後半島の或る祭礼囃子が私に嘯いた、奇妙に歪むもうひとつの神山とその國の笛人の来歴を巡る、荒唐無稽の空想起源譚である。曲は、三神山(蓬莱/方壺/瀛州)に擬えた三章と、それらを結ぶ二つの間奏から成る。独奏者は、三種の笛(フルート/バスフルート/ピッコロ)を場面に応じて執り替えながら、三群の弦楽を纏い・従え・導きつつ、三つの異世界を漂泊する。


 

[編成]

 

Flute Solo (Flute/Bass-Flute/Piccolo)


Strings α

Violin I

Violin II

Viola I

V’Cello I

Contrabass I


Strings β

Violin III

Violin IV

Viola II

V’Cello II

Contrabass II


Strings γ

Violin V

Violin VI

Viola III

V’Cello III

Contrabass III

 

Percussion 1


Percussion 2