交響神樂 第五番〈鳥遊(トリノアソビ)〉
SYMPHONIC KAGURA No.5 <TORI-NO-ASOBI>
(2018)
[ca 11 min.]
第五番の主人公はゑびすさま=コトシロヌシ。〽ゑべっさん、ゑべっさん、みずのなか、くらいか…今の出雲のコドモ達の奇妙なわらべうたに呼び起こされるこの曲は、國譲り神話のハイライト、三穂乃埼にて心おきなくトリノアソビ(鳥狩り)&スナドリ(魚釣り)していたコトシロヌシが「今すぐ来よ!」と天鳥船に呼び出され、父オオクニヌシに國譲りを進言するや、謎めいた所作・天逆手(アメノサカテ/アメノムカイデ)を打ちつつ青柴垣(アオフシガキ)にて水中にお隠れ遊ばした、その今際の際に見たかも知れない、トリトメもない夢の復元。
噪音A Noise A
序/嬉遊部1° Prologue / Divertimento 1°
呈示部 Exposition
嬉遊部2° Divertimento 2°
間 Interlogue
葬送 Funeral
降臨A Descent A
嬉遊部3° Divertimento 3°
降臨Ω Descent Ω
再現部 Recapitulation
カデンツァ Cadenza
結/嬉遊部4° Epilogue / Divertimento 4°
噪音Ω Noise Ω
曲は、あい異なる様式が毀れた入れ子のように食み出し重なる、いわば引き裂かれた嬉遊曲=ディベルティメント。
今際の際の水中のさざめき【噪音A・Ω】、時に無邪気/時に神妙なわらべうた【序・間・結】、終わりを知らぬ小さな神楽【嬉遊部1°-4°】、群れ集う小鳥のさえずり綾なすソナチネ風【呈示部・再現部】、遣る瀬なき永の苦悩に浸された咒言歌【葬送】、天上から有無を言わさず迫り来る国譲りの予兆【降臨A・Ω】、そして日本の鳥の唱歌(オノマトペ)による歌合戦(クォドリベット)【カデンツァ】…。
遊びとは古来、祀りの異名、すなわち同根。トリドリの音楽が、アソビとマツリの両極に振れては主導権を争いつつ、軋み・犇めき・鬩ぎあいます。
***
鳥遊・詞(調阿彌)
ゑべっさん ゑべっさん みずのなか くらいか
なみのそこに しずんだ かごのなかの とりは
いついつ でやる
あかいうしに きいてみよ あおいほしに きいてみよ
ゑべっさん ゑべっさん みずのなか…
とんび とんび まってみせ(まってごしぇ)
からすに かくいて ほうびやる *1
おともがもりの いけにしずんだ かごのなかには
とかげのしっぽが
ヒ フ ミ ヨ イツ ム ナ ヤ ココノ タリ
ひかげのくにの うみにしずんだ つぼのなかには
をろちのしっぽが
ヒ フ ミ ヨ イツ ム ナ ヤ ココノ タリ
ア つった つった ア また つった *2
かごや かごや ことづけしょうえ
なにことづけよ
おきのいわしに こい こい いうとくりゃれよ
おまえもあとから ちゃ のみおいで *3
かぐや かぐや ことづけしょうえ
なにことづけよ
つきのみかどに こい こい いうとくりゃれよ
かくや かくや ものづけしょうえ
なにものづけよ
あめのみことに こい こい いうとくりゃれよ
やつめさす いづもたけるが はけるたち
つづらさはまき さみなしにあはれ *4
みざは ををを… *5
てんがらす スヤ あらす こらす どっこいす *6
ア つった つった ア また つった
ゑべっさん ゑべっさん みずのなか くらいか
なみのそこに しずんだ かごのなかの とりは
いついつ でやる
あかいうしに きいてみよ あおいほしに きいてみよ
ゑべっさん ゑべっさん うしろの しょうめん だアれ
みょうにちは おまつりでござる トーメー *7
*1松江市竹矢のわらべうた
*2大土地神楽・小恵比寿の囃子言葉
*3伊根町本庄のわらべうた
*4古事記・出雲建を打ち殺した倭建の詠める歌
*5出雲國風土記・阿遅須枳高日子が初めて発した言葉
*6美保神社青柴垣神事・天烏の囃子言葉
*7美保神社青柴垣神事・宵祭の御布令
※この他、鳥に纏わる多種多様な擬音・唱歌(オノマトペ)が発せられる。
[委嘱]
出雲市芸術文化振興財団
[編成]
Children's Voice
Picc.2/Fl.2/Ob.2/C-A/S-Cl/Cl.2/Bs-Cl/Bsn.2/C-Bsn
Hrn.6/Tpt.4/Tbn.3/Bs-Tba
Timp/Perc.4/Xyl/Gls
Hrp/Pf
Strings{14/12/10/8/6}
[演奏記録]
2019年3月24日 島根県出雲市 出雲市民会館
Cond:中井章徳 Orch:出雲の春フェスティバルオーケストラ
Cho:出雲の春フェスティバルジュニアコーラス